2020/7/29 Rolling Stone Japan Web
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連載企画「コロナ時代のオンラインでつながるライブ・ミュージック」第一回。次世代電子チケット販売プラットフォーム、ZAIKOのビジョンに迫った。

新型コロナウイルスの影響で起きた最悪のことは、音楽のライブがなくなってしまったことだ。2月26日に大規模イベント自粛要請が発表され、報道などによって、ライブハウスがコロナのクラスター発生場所だというイメージが強く植え付けられてしまったのも痛かった。音楽のライブ、ツアー、フェスは、次々と中止・延期が発表され、ライブハウス、クラブで営業停止や閉店に追い込まれていくところが相次いだ。アーティストはライブができないし、音楽ファンはどこにも何も観に行けない。

音楽業界全体も大打撃を被ってしまった。でもそんな中、無観客ライブ配信が始まって、試行錯誤をいろいろ繰り返しながらも、様々なアイデアで、様々なプラットフォームを使ったライブ配信が次々と生まれたのだ。最近になって、やっと人数限定で人を入れるようなイベントや店も出てきてはいるものの、コロナ前のような状況に戻るのはまだまだ先のことだろう。ここでは、コロナと共生する新しい時代のライブ・ミュージックに取り組んでいるところを5つ紹介していきたい。

実際に取材をしてみてわかったのだが、その取り組みのどれもが、単なるライブ・ミュージックのオルタナティヴではなく、ライブ/リアルとオンライン/デジタルを融合したところから新たに見えてくる、新しい音楽のあり方にベクトルがすでに向いていたのが興味深かった。アーティストやクリエイターにとっても、音楽ファンにとっても、様々なヒントがあると思うので、この記事が良いきっかけになればとも思う。


ZAIKOがスタートしたきっかけ

新型コロナウイルスの影響で、多くのライブやイベントが開催中止、延期となり、主催者やアーティストの中から、動画配信プラットフォームを使った「無観客ライブ」などを配信する試みが出てきた。その多くは無料配信であり、課金に関しては「投げ銭」を導入するなど、試行錯誤が続いていた。

そんな中、次世代電子チケット販売プラットフォームとしてスタートした「ZAIKO」は、電子チケット販売にライブ配信のオプションを付けられるサービスを3月6日から開始。ZAIKOは取り組みも早かったが、3月13日の初配信からこれまでに1000本以上のライブ配信を手がけるなど(2020年7月現在)、実績の方も圧倒的に多いプラットフォームである。ZAIKOの特徴として、イベント主催者やアーティストのブランドに合わせてカスタマイズしたイベント・チケットを発券・販売できるというのがある。

主催者側にとっては、オリジナルのチケット販売システムのような見え方での販売が可能であるし、チケット情報の管理も販売状況もリアルタイムに分析でき、データを活用してユーザーに対して直接コミュニケーションを取ることも可能だという。様々な機能をカスタマイズできるのも、世界中でチケット販売できるのも魅力的だ。ZAIKOのデジタルメディア・マーケティング主任の大野晃裕さんに話を聞いた。

―ZAIKOはどういうプラットフォームとしてスタートしたのですか?

大野:ZAIKOの前身でiFLYERという音楽系のポータルサイトがあって、そこから前売りチケット、当日券があるというのをウェブで完結できたらいいよねっていうのがあったんです。社長がプログラマーだったので、そのまま今のZAIKOのシステムを組み立てて、iFLYERの中でローンチしたんです。ZAIKOは電子チケット販売のプラットフォームということで、2019年1月にスタートしました。プレイガイドと大きく違うところは、まずは多言語、多通貨対応なところですね。グローバルな視点で、インバウンドしかり、海外に向けて発信できるというところを強みにやっていたというところがあります。

―コロナ以前はどのような取り組みが多かったのですか?

大野:FUJI ROCK FESTIVALやEDMなどのフェス系に加えて、クラブ系、インディー系のイベントが多かったですね。外タレ系では、ZAIKOをインバウンド向けという形で導入してもらうことがけっこう多くて。あと、MUTEKさん、Red Bullさん、DMMさんのeスポーツ系のイベントにも取り組ませてもらっていました。


転機となったceroの「Contemporary http Cruise」

―有料チケット制によるライブ配信は、いつから取り組んでいるのでしょうか?

大野:コロナを受けてからですね。元々、2020年に5Gが始まるというので、オンラインでのライブの需要が増えていくというのを考えてはいたんです。それが急にコロナによって、僕たちのイベントも9割9分なくなってしまったところで、急遽開発を進めたような感じですね。社員の半分がエンジニアなのもあって、他社よりもこのサービスを早くローンチできた背景があります。

―最初に行った有料チケット制によるライブ配信は、3月13日のceroによるライブ配信の「Contemporary http Cruise」ですか?

大野:そうです。カクバリズムさんは元々僕たちがチケット販売をやらせていただいていて。ちょうどceroさんのイベントがキャンセルになりそうだというタイミングで、ライブ配信の機能が完成していたので、すぐに連絡をしたところ、二つ返事で「じゃあやりましょう」ってことになって。その話を持ちかけてから開催までが1週間です(笑)。機能に関しては、最初に用意していたものから、ceroさんとのお話の中から出てきた、「こういう機能はできないのか?」「こういうのがあったらいいよね」みたいなところを、その1週間の間にブラッシュアップしていきました。元々、電子チケットを販売していたところに、ライブ配信を埋め込むような形になったので、一から作り上げたというよりは、元々あるシステムに乗せていったようなイメージですね。
1_3uehgcjj3l5u4qp6veou9.jpgZAOKO初の有料チケット制によるライブ配信、3月13日のceroのライブ配信「Contemporary http Cruise」(Photo by 廣田達也)

―チケットを売るシステムと、ライブというコンテンツを配信するシステムは異なりますよね。

大野:そこはエンジニアたちがスゴいスピードでVimeoさんと話をしました。当初はYouTubeでやる予定だったんですけど、YouTubeの規約に違反しているという連絡が来て。そこから、Vimeoさんのシステムをどのようにこのチケットの中に埋め込むのかっていうところを、夜な夜なVimeoさんとやり取りして、最終的には2社間での独自の契約を結ぶことができました。開発に関しては、視聴ページに埋め込んでいるVimeoの映像から、仮にリンクが外部に漏れてしまったとしても、ZAIKOの外ではコンテンツが視聴できないようにシステムの中でどう制限ををかけていくかっていうところが、だいぶ難しかったんじゃないかなと思います。


有料チケット制の導入について

―コロナ以降、アーティスト側のライブ配信が増えて、無料配信が多い中、投げ銭制をやるなど試行錯誤していた時期に、いきなり有料チケット制を導入しましたよね。そこの判断はどう決めていったのですか?

大野:ライブ配信を始めたきっかけとして、もちろん僕たちもイベントがなくなって苦しかったこともあるんですけど、それ以上に、主催者さんたちの収益源がなくなってしまうというところを危惧していて。有料でやるというのは、主催者さんやまつわる周りの人たちへの支援というところに重点を置いているからです。当初、みなさんが無料でやっている中で有料というのは、けっこう批判的なことを言われるんじゃないかというのも想定していたんですが、実際にはネガティヴな反応は全くなくて。Twitterと連動したコメント機能も作ったので、コメントが自動的にTwitter上に反映されることになって。Twitter上にいる人たちが、「何だ、何かやってるらしいぞ」ってなって、それがチケットの購買につながるようなこともありましたし、話題にもなりましたね。あとは、今までのリアルなイベントでいうと、例えば、チケット代が1000円だとすると、システム利用料や券売手数料が何百円か組み込まれていたんです。それがZAIKOでは、ユーザー負担にするか、主催者負担にするかを選択できるオプションを与えています。そういったいろんな機能がどんどん追加されている感じですね。

―3月13日の初配信からこれまでに手がけてきた配信は何本ありますか? その中で、特に印象的だった配信は?

大野:今は1000本に達しています(2020年7月現在)。最近では週末だけで何十本も配信してます。印象的だった配信でいうと、やっぱりceroさんの時はみんなでドキドキしてましたね。RAINBOW DISCO CLUBもかなり大きく話題になりました。GW中に全国から出演者が出たVirtuaRAWという40時間のイベントも面白かったです。あとは、落語、演劇、アイドル系もありますね。アイドル系の人たちはファンとのエンゲージメントがスゴく高いので、ファンの方もどんどん買って、投げ銭をしてくれてたりするので、全然僕らが知らなかったイベントでも、けっこうな枚数が動いていたりするんです。ZAIKOのシステムは自由度がスゴく高いので、このシステムを使って、工夫して、ユーザーに対して面白いコンテンツを提供したり、コミュニケーションを取ったりというのを、みなさん試行錯誤してやっていただいていますね。例えば、ちょっと高めの5000円の投げ銭をしてくれた人の中から、抽選で何人かにZoomに参加できる特別チケットをプレゼントしますとか、みなさんがそういうアイデアを出し合って、シーンを盛り上げているのが感じられますね。
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新型コロナウイルスの影響により中止となった「RAINBOW DISCO CLUB」が開催した配信イベント「somewhere under the rainbow!」。4月18日の12時から12時間に渡って配信された。(Photo by Yutaro Tagawa)

他の有料配信プラットフォームと異なる点

―コロナウイルスの感染拡大が起こってから、多くの有料配信プラットフォームが出てきていますが、その中で主催者がZAIKOを選ぶメリットとは何でしょう?

大野:有料の電子チケット制の配信の実績で言うと、ZAIKOがダントツで多いというところですね。あとは、自由度が圧倒的に高いんです。リアルな電子チケットの時からそうですけが、ユーザーのデータを僕たちはオープンにしているんです。プレイガイドさんはユーザーのデータを自分たちで囲って、自分たちのプロモーションに使っていますが、僕たちは主催者さん側に提供して、どんなユーザーさんが見ているのか分析していただいたり、主催者さん側からユーザーにコミュニケーションを取ってもらったりしていますね。そこは収益以外のところで価値を感じていただいているところだと思います。

―チケット販売や投げ銭の手数料の方も、他社と比較して安価であるとのことですが。

大野:だいぶ安いと思います。他社ですと、40%、50%取るところもありますし、YouTubeは55%ですね。初期費用もランニングコストもあまりかからないので、ある意味、裸の状態でやっていただいて、チケット利益で上がった分の一部だけいただくという形になっていますので、入り口としては入りやすいのかなと思います。

―中国のQQ音楽と提携もしていますが、これはグローバルに広げるためでしょうか。

大野:中国のようにGoogleやFacebookが入れないところで、そのまま日本のコンテンツを配信するというのはかなり障壁が高いんです。なので、QQ音楽さんという、中国版のSpotifyやApple Musicのようなところからであれば、ちゃんとオフィシャルで配信もできるよねっていうことなんです。

―今後の展望についてもお聞かせください。

大野:ライブ配信のコンテンツ自体が飽和してきている感がある中、ライブ配信だからこそ得られる視聴体験みたいなものをどう出せるのかを、ある意味コンサルタント的な立場で、主催者さんと一緒に企画をしていけるような体制も作っていきたいと思っていますね。あとは、今ライブ配信をやっていて、そこからどうリアルな現場につなげられるかということですね。例えば、投げ銭をした人が現場に行った時に、それが電子チケットとなって何かと交換できるみたいなことだったり。電子チケットの仕組みを生かしてどうデジタルとリアルをつなげられるか、開発を進めているところですね。グローバルな視点では、インバウンドのお客さんが1年ぐらい戻って来ないんじゃないかと言われているので、どうやって海外のお客さんにコンテンツを届けられるかというところを、僕たちにしかできない機能や仕組みを活かしてサポートをしていきたいなと思っています。あと、先ほどVimeoの話をしましたが、ZAIKOのオリジナル動画配信サービスというのがすでに出来ているんです。なので、今後はVimeoからではなく、自社の動画配信サービスを本格的に使っていきます。オリジナルなので、同じ時間帯での同時配信数の上限もなくなりますし、より自由にアーカイブも楽しめるようになります。

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Wednesday, July 29, 2020